2020年の小売業界におけるデジタルイノベーションを牽引したキーテクノロジー | Market Research Blog

※本記事は英語でもご覧頂けます:Key Technologies Leading Digital Innovation in Commerce During 2020

デジタル時代の商取引にとって、テクノロジー主導のイノベーションは当然の進化の道すじではあるが、世界的なパンデミックという予測が非常に難しい環境下でのデジタルイノベーションは、従来のイノベーションとは大きく異なる。テクノロジーへの投資を決定する際、最も重要となるのが、厳しいビジネス環境における収益性と利益をもたらす可能性、そしてそのテクノロジーの「有効期間」の長さである。ユーロモニターが実施した『ボイス・オブ・ザ・インダストリー:デジタルコンシューマーサーベイ』調査(2020年)によると、産業有識者たちが挙げるデジタル化を妨げている理由の中で圧倒的に多いのが、資金不足と投資に対する明確なリターンがないことである。

しかし企業は、店舗閉鎖、安全プロトコル措置、移動制限、人と人とのつながりの希薄化、リモートワークといった状況の中で業務を継続する必要性に伴い、自社のサービスをリデザインし、今まで以上に信頼性が高く時代に沿ったものにする機会を見出している。市場投入までの時間が短縮され、より迅速な導入が求められる中、企業は利益を最大化するために、目的に合ったテクノロジーを革新的に使用する必要がある。

「51%以上の産業有識者が、COVID-19のパンデミックによってデジタルシフトが少なくとも1年から2年は早まったと回答している。」

2020年、プロセスのアップグレードやビジネス機能のサポートの場面において効果を発揮したテクノロジーは、クラウド、IOT、そしてAIであった一方で、デジタルイノベーションをサポートするために最も広く活用された3つのテクノロジーは、拡張現実/バーチャルリアリティ、ロボット/自動化、QRコード/バーコードであった。また、バイオメトリクス(生体認証)は、指紋認証テクノロジー以外も幅広く活用されつつある。

以下の分析では、現在の厳しい状況下において、企業がいかにこれらの技術を使ってイノベーションを起こしているかを説明していく。

3Dバーチャルショッピング体験を提供するカナダのINABUGGY.com

INABUGGY.comは、提携するカナダ全土の食料雑貨店を介して商品の受注から配送までのフルフィルメントを提供する、食料雑貨および酒類製品のオンラインデリバリープラットフォームである。2020年、同社は国内の小売業者McEwan Fine Foodsと共同で、3Dバーチャルショッピング体験の提供を開始した。買い物客はバーチャルストア空間の中、オンラインで店内の通路を巡り、商品をクリックすると詳細情報が表示され、カートに入れることができる。3Dバーチャルショッピング体験によって、従来のオンラインストアのインターフェースでは見落としていた商品を発見することができるなど、消費者は自宅に居ながらにして、リアルなショッピング体験を得ることができる。

Source: Inabuggy.com

COVID-19危機により、今までの買い物方法に取って代わるインターフェイスの必要性が浮き彫りになり、より多くの企業が、従来のEコマースを超えるバーチャルな没入型体験を提供するようになった。2020年11月に実施されたユーロモニターインターナショナルの『ボイス・オブ・ザ・インダストリー:デジタルコンシューマーサーベイ」調査によると、産業有識者の38%以上が、「今後5年間で自社がAR/VRに投資する予定である」と回答しており、リアルな体験をオンラインで再現することが、これからの重要なユースケースになることが予想される。このような技術を自社だけで大規模に展開することは、多くの小売企業にとっては難しいが、サードパーティと提携することで、コストやサービスの最適化が可能となるだろう。

AR/VRの影響が最も大きくなると予想される分野

カルフール:湾岸諸国におけるオンライン注文の対応にロボットを活用

Carrefour(カルフール)の中東地域におけるフランチャイズホルダーであるMajid Al Futtaimは、2021年にアラブ首長国連邦とサウジアラビアで食料雑貨のオンラインショッピング用のフルフィルメントの自動化を開始した。米国のTakeoffの技術を導入し、一部の店舗内にロボットを配備したマイクロ・フルフィルメント・センターを構築している。オーダーの準備にかかる平均時間は5分に短縮され、1,500平方メートルのスペースで1日に2,000件の注文を処理することができるなど、競争の激しい食料雑貨小売業界でカルフールを優位に立たせている。

パンデミックが食料雑貨のオンライン販売を後押しする中、変わり続ける市場で顧客をつなぎとめるためには、注文の正確さと配達時間の両方が鍵となる。2020年、食料雑貨小売店ではオンライン注文に対応するために店舗内で商品をピックアップする人員を増やさなければならず、フルフィルメントコストが増加した。このような経費を削減するために、食料雑貨小売業界では自動化やロボットを使い最適化を目指す傾向がますます強まっている。この流れは食料雑貨店が自社サイトでEコマースの注文を処理し、様々なラストマイル配送プラットフォームと提携するようになると、さらに重要になるだろう。

フルフィルメントセンターで稼働するTakeoffのロボット

Source: Takeoff Technologies/Knapp

「53%の業界関係者が、今後5年間でロボットおよび自動化に投資する予定であると回答している。」

ポーランドのPayEye:虹彩認証を使用した初の決済プラットフォーム

ポーランドの決済サービスプロバイダーであるPayEyeは、2020年に虹彩認証に基づく初の完全な決済エコシステムを立ち上げた。同プラットフォームは、独自の目によるPOS決済デバイスとアルゴリズムを利用して、PayEyeコードと呼ばれる生体パターンを検出する。ユーザーはpayeye.comでバーチャルウォレットを登録またはトップアップし、その後、PayEyeの決済端末を設置しているパートナー加盟店で、自身の生体認証テンプレートを生成する必要がある。サービス開始から数ヶ月後には、カフェ、食料品店、ホテルなど数百の店舗にPayEyeの利用が拡がった。同様のコンセプトは、今後欧州のより広い範囲で利用できるようになることが期待されている。

PayEyeは、世界のキャッシュレス決済への流れを象徴するものである。現在、キャッシュレス決済にはスマートフォンが使用されることが多い一方で、生体認証はパスコードを必要としないことから、デジタルに疎い高齢者など、現在キャッシュレスの恩恵を受けていない消費者層にもメリットをもたらす可能性がある。セキュリティ機能が追加されることで、更に消費者からの人気が高まることが考えられる一方、プライバシーへの懸念から生体認証に抵抗を感じる人々が増える可能性もある。

PayEyeを利用し顧客からの支払いを受けるカフェ

Image Source: The photo shared by PayEye Sp zoo

「25%近くの産業有識者が、今後5年で生体認証テクノロジーへの投資を計画していると回答している。」

消費者行動の変化が加速する中、デジタル機能の重要性は益々高まりつつある。ユーロモニターインターナショナルの『ボイス・オブ・ザ・インダストリー:デジタルコンシューマーサーベイ』調査(2020年)によると、産業有識者の68%近くが、COVID-19の余波を受け、消費者は企業のデジタル対応力により強い関心を持つようになると予想している。無料ウェビナー『Top 5 Digital Consumer Trends in 2021』では、今年の小売市場に最も影響を与えるであろうテクノロジー主導のトレンドをより詳しく説明する。

これらのデジタルイノベーションが自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて詳しい調査にご興味のある方は、こちらまでお問い合わせください。

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(翻訳:横山雅子)


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